本来脊柱（背骨）は正面、あるいは背面から見るとまっすぐに伸びているものですが、脊柱が左右に曲がっている状態を脊柱側弯症（せきちゅうそくわんしょう）、または側弯症と言います。

先天性の側弯症もありますが、乳幼児側弯症、学童期側弯症、思春期側弯症に分けられ、脊柱側弯症の多くが思春期に突発性として表れるため、小学4年生から中学3年生までの間が特に注意が必要とされています。

また、側弯症の弊害が大人になってからさまざまな症状として現れることもあります。

外見上の問題もさることながら、内臓機能の低下や腰痛、肩こりといった肉体的な健康への影響もあります。

上図のように、レントゲン写真で前後方向で見た時に、胸椎や腰椎のいずれかに弯曲があるシングルカーブと、両方に弯曲があるダブルカーブとに分かれます。

シングルカーブをCカーブ、ダブルカーブをS字カーブと呼びます。

医療の世界では、側弯症のうち、80-85％は原因が分からず、「突発性側弯症」と呼んでいます。

原因が分かっている側弯症は、次の５つです。

①先天性側弯症といって、椎骨に生まれつきの形の異常があるために発症するケースです。

②神経・筋原性側弯症：神経や筋肉の病気が原因で発症する側弯症で、脊髄空洞症、脳性麻痺、筋ジストロフィーなどがあります。

③神経線維腫症による側弯症：特有な色素斑、皮膚腫瘍、などにより診断されます。レックリングハウゼン病ともよばれています。

④間葉系疾患による側弯症：血管や結合組織の生まれつきの病気によるものです。マルファン症候群が代表的です。

⑤その他の側弯症：放射線治療、やけどなどによるケロイド、骨系統疾患、感染、代謝疾患、脊椎の腫瘍などが癌院のものです。

椎間板ヘルニアなどの痛みから、後天性で、一時的に生じた側弯を「機能性側弯」と言います。

簡単にはまっすぐに戻らなくなった状態を「構築性側弯」と言います。

そもそも、人は生活をする中で重力を受けながら二足歩行をするので、背骨の関節に負荷がかかるものです。多くの場合は寝ている間に、各部位に栄養が届き関節の組織を修復したり、寝返りを打ったりする中で配列を正したりしています。ところが、まっすぐに戻らなかった状態というのは、日々の姿勢や仕草、所作に癖があり、まっすぐに戻る前に更に歪みが重なっていく習慣的な要素と、交通事故やスポーツの怪我や、小さい時に頭を打ったなどにより骨折はしなくとも、関節に負担がかかる事故的な要素が考えられます。多くの場合は、それらの要素が重なりあって、自分の力では戻せなくなってしまう状態となり、背骨が側弯になります。

当院の臨床例から、赤ちゃんの時に吸引分娩や鉗子分娩で出産された方は、頭部にゆがみが生じたり、斜頸になったりするケースが多いことが分かっています。また、子どもは5歳までにおよそ2,000回転倒し、その内の1割は強くどこかを打っています。また、小学校に入ると座る時間が長くなるのと、重たいランドセルを背負うことで、関節への負担も重くなり、世界的にも小学校に上がる段階で姿勢が悪くなることは分かっています。それに加えて、近年はパソコンやスマホ、スマートパッドなどを猫背の状態で使用することも問題の一員となっています。

Cobb 角（コブ角）とは側弯の程度を表す用語で、レントゲン写真で側弯の程度を示すのに最も繁用されている指標です。

また側弯の角度と治療との大まかな目安は、下記の通りです。
コブ角 10～25゜： 軽度
コブ角 25～40゜： 中度
コブ角 40～50゜以上： 重度

病院で示される対策は、側弯症の状態によって異なります。

コブ角が２５度以下の場合は、経過観察となります。定期的にレントゲン撮影をするよう指示をされますが、具体的な姿勢指導は基本的にはありません。

コブ角が２５度～４０度の場合は、コルセットなどの装具をつけた治療となります。寝ている時のみ、寝ている時も日中も全てなど、角度の度合いによって装着時間を指定されます。

コブ角が４０度以上の場合は、手術を受けることを提案されることがあります。

ただし、手術をした場合、金属を取り出すことは基本的にできません。また、体の侵襲性も高いので、できることであれば避けたいと考える医師も多くいらっしゃいます。

当院では、軽度、中度、重度のいずれにおいても、姿勢の検査で姿勢の状態を前後、左右、回旋を評価し、カイロプラクティック施術の計画、日常の姿勢矯正ケア、エクササイズ指導などを行います。

当院にいらっしゃる多くの方は、学校の運動器健診で引っ掛かり、病院で再検査をして、経過観察と言われたり、装具を作っていたりします。矯正器具以外にも効果のある方法を探してホームページで検索されたり、ご紹介でいらしたりしています。

これは当院で採用しているポスチャースクリーンという検査機器で撮影した画像ですが、首が前に出ていることが分かるかと思います。見るからに悪そうというレベルには見えないかもしれません。しかし、たった15度傾くだけでも首には実に７Kgの負担が掛かるのです。

７ｋｇと言えば、身近なものだと２リットルのペットボトル３本分と同じぐらいの重さです。

姿勢が歪んでいれば身体には大きな負担が掛かるようになります。人間の身体はその状態にも慣れようとしますから、すぐには痛みは現れませんが、許容できる負担を超えるとそれが症状として現れてくるのです。

私はこれまでの姿勢指導に対する実績が評価され、2016年3月に「1日3回で、ねこ背がよくなる『姿勢の魔法』シャキーン！」という姿勢に関する本を出版しています。Amazonでも健康人新書のジャンルで１位を記録している姿勢の専門家です。

もっとも、この「姿勢」だけを痛みの原因と特定する治療院も多いですが、それだけでは説明がつかないような患者さんが増えていることも事実です。

日本ではレントゲン施設を作ることができるのは、医療機関だけで、放射線技師が撮影し、医師しかレントゲン画像の読影診断を行うことはできません。

一方、アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなどでは、カイロプラクティック院の多くがレントゲン施設を保有し、レントゲン読影診断を行います。

私自身も海外のカイロプラクティッククリニックの最新のレントゲン施設の見学をしてきたこともあります。

日本の整形外科と海外のカイロプラクティック院のレントゲンの撮影方法の違いは、撮影する部位です。カイロプラクティックでは、頚椎、胸椎、腰椎、仙椎までを撮影することで、背骨全体の歪みがどう出ているかを撮影します。これは、カイロプラクティックでは、側弯症の原因を頚椎、胸椎、腰椎、仙椎の関節の動きが関連し合っていることが臨床上分かっており、頭部、頚椎、胸椎、腰椎、仙椎の全てにアプローチすることができるためです。それに対して、日本の整形外科では、胸椎と腰椎の部位のみを撮影します。これは、日本の整形外科では、胸椎、腰椎の部分に着目して、コルセット装具をつける際には胸部と腰椎をカバーすることに着目しているからです。

上図の左側のイラストの様に、タオルの上部と下部を手でしぼる（ひねる）と、中央部分にねじれが生じます。タオルをまっすぐに戻したいのであれば、『ねじれている中央部分』を強制的にまっすぐにするよりも、『手で絞っている部分』の力を緩めることで『ねじれている中央部分』をまっすぐにする方が楽にできることは明らかです。

私自身もカイロプラクティック大学において、レントゲン診断学を修了しております。ただし、私は医師ではないので、直接画像診断でこれが側弯症ですよ、と表現すると医師法違反になりますので、お伝えすることはできません。また、当院は医療機関ではありませんので、レントゲン撮影をすることはできません。しかし、レントゲンの検査結果を持参いただければ、医師法に触れない範疇で、カイロプラクターの見解をより分かりやすくお伝えすることはできます。そもそも、レントゲンを世界で最初に取り入れたのはカイロプラクターです。奇しくもカイロプラクティックもX線も1895年に誕生していますが、当時は骨を写す悪魔の光線として恐れられていましたが、その効果の高さを見て、後に医師も診断に使うようになりました。その後も、カイロプラクティックレントゲン診断学と、整形外科レントゲン診断学は独自に発展しております。カイロプラクティック大学卒業のカイロプラクターは、カイロプラクティックレントゲン診断学も、整形外科レントゲン診断学もいずれも学んでおりますので、ご安心ください。

当院では、手（カイロプラクティックの「カイロ」は「手」という意味）で背骨はもちろん、全身の関節や筋肉を触診します。

手で触れることで背骨（頭蓋、頚椎、胸椎、腰椎、仙椎）の配列の確認、背骨に加えて腕や足のそれぞれの関節の可動性の確認、それに加えて筋肉が緊張しているかリラックスしているかの確認、筋肉の強度の確認、腹部などに圧をかけることで胃腸の働きを調べる検査を行います。

真剣に側弯症の対策をしたいという方のために、考えていただきたいことがあります。

"Scoliosis"は「側弯症」と訳されるのですが、カイロプラクターの視点では、これはもう少しよい訳にしてほしかったと個人的には思っております。

と言いますのは、本来の"Scoliosis"は、左右どちらかへの傾きという意味以外にも、前弯症や後弯症も含むからです。

そもそも、背骨は前後、左右、回旋の６つの動きをします。

これらの動きを組み合わせて体を動かしています。

ですので、"Scoliosis"は、「過弯曲症/過弯症/弯曲症」のいずれかの訳語が誤解がないように思います。

側弯症の定義を小さく捉えると、胸椎、腰椎の左右への背骨の歪みということですが、大きく捉えると、頚椎、胸椎、腰椎、仙椎の左右、前後、回旋の歪みと捉え、この場合、猫背は過後弯、ストレートネックは頚椎の過後弯、反り腰は過前弯、という認識をすることができます。

側弯症の定義を小さく捉えると、検査をした時に問題の全容をつかまず、一部分的に捉えてしまい、根本原因がどこかを見逃してしまう可能性があるので注意が必要です。

側弯症の状態は、完全に回復することは難しくとも、まずはそれ以上進行させないようにする、そしてできる限りの改善を目指す、というアプローチになります。

一生付き合っていく体について、広く、正しく理解し、最善のケアを行うお手伝いができれば嬉しいと考えております。

側弯症は、成長期に進行することが多いですが、大人になってから進行することもあります。

病院で行う処置以外に、役立つことを科学的に行える院として、お役に立てましたら幸いです。